対談2016年 夏春糀対談 ~糀って楽しい!~ お客様/「カフェ・レストランBAL」オーナーシェフ 小夜敬平さん

「カフェ・レストランBAL」オーナーシェフ 小夜敬平さん 浅利妙峰(あさり・みょうほう)
小夜敬平(さよ・きょうへい)
「カフェ・レストランBAL」オーナーシェフ
1952年、大分県佐伯市生まれ。大阪の辻調理師専門学校卒業後、京都「石長松菊園(いしちょうしょうぎくえん)」にて修行後、実家の旅館を継ぐ。1972年「カフェ・レストランBAL」を開店。美しくボリュームたっぷりのオリジナル料理で多くのファンを魅了している。
浅利妙峰(あさり・みょうほう)
「糀屋本店」女将
1952年、大分県佐伯市生まれ。元禄2年(1689年)に創業した『糀屋本店』の長女として生まれ、2女3男を育てた後、2007年から”こうじ屋ウーマン”を名乗り、糀文化の普及と伝承のために国内外を奔走。塩糀を現代に甦らせた糀ブームの火付け役。

 

糀を通じて素敵なご縁をいただいた方とおいしいお話で盛り上がる対談シリーズ。2回目のゲストは、幼稚園以来の幼なじみで、同じ「食」を通して故郷・佐伯を元気にしようと頑張っている「カフェ・レストランBAL」のオーナーシェフ、小夜敬平さん。糀でもタッグを組んでいる2人が語るおいしい料理へのこだわり、そして同級生ならではの思い出話が飛びかう楽しい対談となりました。

浅利妙峰(以下、妙峰):お店を始めて何年だっけ?

小夜敬平(以下、小夜):もう44年目。

妙峰:すごい、もうすぐ半世紀ね。確か、料理の修行をしたのは京都だったかな。

小夜:そう、京都石長松菊園。四条流のお師匠さんだった親父さんに気に入られて一所懸命働いた。最初はそんなにすごい人だとは知らなかったけど、出会えたことがラッキーだなと思って、色々と教えてもらったし、必死に技を受け継ごうと常に意識をしていた。

妙峰:でなかったら、こんな味は出せないよね。一流の仕事場で修業をして、一流のお客様に触れる。それでこそ一流の仕事の仕方が学べる。

小夜:3年くらい経った頃、父親の体調が良くなくて佐伯に帰ってきたけど、旅館の料理は朝と夜だけだから、21歳になる少し前の2月14日にこの店を始めた。「バレンタインデー」も「BAL」も今では珍しくない響きだけど、当時はフェスティバルとか、人が集まる場所であって欲しいと名づけたんよ。

妙峰:最初は、カレーがおいしいお店で評判やったなぁ。

小夜:当時の店のキャッチフレーズは「カレー&コーヒー」。カレーは軽食の代名詞、コーヒーは喫茶の代名詞と思って考えたけど、「カレーとコーヒーしかないの?」と言われた。でも、カレーも色々なバリエーションを作ったよ。特に、焼きカレーは発祥の地まで食べに行って研究してメニューに載せたら、うちの方がおいしいと評判になったくらい。

妙峰:今はメニューもカレーだけじゃなくて色々増えたけど、
ここは家でご飯を食べるような感覚でお料理が出てくるからホッとする。ご飯があって、お味噌汁があって、漬物があって、野菜もあって…。

小夜:料理の原則というのは、おいしいご飯、おいしいお味噌汁とおいしい漬物があったら充分で、おかずがあればなおさら良い。とにかく美味しくなかったらお金はいただけないと思ってずっとやっとるんよ。

妙峰:そこがお客さまの心をグッとつかんで離さない大事なところやろ。

小夜:冷蔵庫を開けて、材料を見て、アイディアが生まれて、さっと作る。それが料理じゃないかな。決められたレシピ通りにやるのが料理ではないと思う。これまでに何万食も作ってきたけど、日替わりもあるし、とにかく毎日たえず考えているよ。

妙峰:敬ちゃんは、小さい時から絵が上手かったよなぁ。力まずササッと描く絵がいつも市や県で表彰されて、展示されよった。そういう絵心や色彩センスの良さがお料理に生きている。味はモチロン、見た目もまるで絵を描くような感じ。自分も楽しみ、お客さまも喜ばせる。そういう両方の喜びが上手くマッチングしたアートやなといつも感激する。

お客さんが「わあー、おいしそう!」と言ってくれたら「成功!」 小夜

小夜:お客さまにお料理を出したときに「わあー、おいしそう!」と言ってくれたら「成功!」だから、盛り付けや色合いにはこだわるよ。時々はよその店に行って刺激され、帰ったらすぐに反映させて、常に前向きで初心を保ち続けられるように心がけとるよ。

妙峰:きっとその根っこは、佐伯の自然と感性豊かに育った旅館の家庭環境の中にある。お客さまに対するホスピタリティーや、常に旬のものを出して喜んでもらおうという心配りが自然と身についてる。そこに流れる接客魂というのは、根底で繋がっていると思う。

小夜:とにかくお客さまの健康が一番だから、ご飯にしても漬物にしても全部手づくり。ご飯はオリジナルの二十穀米だし、ぬか床も毎日手を入れているよ。

妙峰:さすが、お客様を大事に思う愛があればこそやね。

小夜:よく「昔ながらの味だ」と言うけど、人間の舌って肥えていくから、最初に食べておいしいと思っても、同じものを10年後に出すと何か味が変わったなとなる。だから、味も少しずつ時代とともにブラッシュアップさせていく努力をしている。

妙峰:そう、変わらないように見えても、時代に合わせて、変わり続けていくって大事なんよ。

小夜:あと、季節のものをできるだけ取り入れて、春になったら菜の花やタケノコを、夏にはのど越しのいい食材をと、工夫を凝らして四季を感じてもらいたい。秋になっても、マツタケは使わないけどね(笑)毎朝・毎晩習慣のように足を運んで下さるお客様もおるけん、ここで季節を感じてもらって、毎日の活力を養ってもらえたら幸せだなと思いつつ。

「見て喜び、食べて嬉しい。作る自分も楽しんで、お客さまも幸せになれる。季節の移り変わりを感じられるお店っていい。」こうじ屋ウーマン

妙峰:見て喜んで、食べて嬉しい。季節の移り変わりが感じられる雰囲気づくりは、繁盛店の基本!私も疲れ果てて佐伯に帰ってきたときは、「BALに連れて行って」とお願いして、元気をもらいにくるもん。敬ちゃんの気持ちは、どのお客様に通じとるわぁ。

小夜:ありがとう。洋食とか中華は、お皿を目いっぱい使って盛るけど、日本料理のあの独特の空間の美はすごいなと思う。その点、うちは盛り過ぎだね。

妙峰:ここの料理は見ただけで幸せになれるけん、いいんよ。たっぷり野菜がある安心感と、綺麗な色合いも、確実にお客さんの心をつかんどる。それに、塩糀や甘糀も使ってくれていてありがたい。

小夜:ボクは最初、塩糀というものを知らんかった。妙峰さんから「うちの近くで糀を使った美味しい料理が食べられるお店が欲しい」と言われて使い始めたのが始まり。あの時は、まだブームになってなかったけど、今では糀が息を吹き返して、全国の糀屋さんがいい方向に行っているからすごいよなぁ。

妙峰:そう言われると、照れるわぁ。実際に糀を使ってみての感想やお客さんの反応はどう?

小夜:塩糀は肉や魚などいろいろやってみたけど、鶏肉は特においしくなるね。それから、鍋も。

妙峰:デザートにも糀を使ってくれて、ありがとう。

小夜:フルーツの甘糀あえやな。鶏モモの塩糀焼きとセットにしとる。メインに塩糀を使っているから、デザートには甘糀を味わってもらおうと出してみた。初めてのお客さんには、「鶏肉には塩糀を使って、フルーツにかかっているのは甘糀で、自然の甘さを楽しんでください」って説明すると、みんなにっこりして、喜んでくれるわぁ。

妙峰:すごい。何も考えないで食べていたけど、対比するとわかりやすい。

小夜:おかげさまで糀料理の評判はとてもよくて、ほとんど残す人がおらんよ。

妙峰:おいしいのはモチロンだけど、ボリュームもあるのが嬉しい。なのに、不思議なくらいスーッと消化して重くないから、いつもデザートまで完食する。

小夜:足りないよりは食べきれないくらいの方が嬉しいというか、満足感があるんじゃないかな。うちはお客さんの8割が女性。健康にいいことをいつも考えて、彩の良い野菜サラダをたっぷり添えて、デザートやドレッシングにもこだわっているのが長く続いている理由かな。

妙峰:やっぱり見た目も大事、味も大事やな。ところで、今日はお店でも大人気のスイカジュースと、新レシピの甘酒ミルクセーキを紹介してくれてありがとう。2つ並べるとカラフル!元気の出るビタミンカラーで、とてもきれい!色使いにも絵心が現れるなぁ。スイカジュースを初めて飲んだ時の感激は忘れられんし、甘酒ミルクセーキもびっくりするくらい美味しい、幸せ~。きっと皆さん喜んでくれるはず。楽しみ!

小夜:いろいろ工夫を重ねながら自分の味にして、素材の持つ美味しさをうまく引き出すという点では糀と一緒だね。どちらも家庭で簡単にできるので、ぜひお試しを。買ってきたスイカが甘くない時や、そのまま食べるのに飽きた時にオススメよ。

妙峰:ミルクセーキもジュースも、ちょっぴり塩糀を加えると甘味が増して、何倍もおいしくなるよね。一口大に凍らせておけば子どものおやつや夏のオシャレなスイーツにぴったり。

小夜:読者の方がご家庭で簡単に再現できるようなレシピにしたんやけど、作るのが面倒に感じる時は、BALでお待ちしています!ただし、8月31日までの夏限定メニューですから、お早めにどうぞ。

妙峰:夏になるのが待ちきれない!佐伯にいらした際には、この味をぜひ味わってほしい。今日は、楽しい時間をありがとうございました。

カフェ・レストランBAL(バル)カフェ・レストランBAL(バル)

見ておいしい!食べて嬉しい!ボリュームも満点!「ただいま」とドアを開けると、「お帰り」と迎えてくれるホスピタリティーと懐の深さ。ツンとしたよそ行きの感じではなく、だけど、家庭料理よりはごちそうな、期待以上の料理があります。楽しい時間の共有はもちろん、疲れたり、落ち込んだりしても、食べたらすっかり元気になって「ありがとう、また来るね」という気持ちになれる心地よいお店です。

◎営業時間 ・昼10:00−16:00
(オーダーストップ15:00)
・夜17:30−21:00
(オーダーストップ20:00)
◎ 定休日 日曜日
◎ 所在地 大分県佐伯市船頭町1−24
0972-22-5201