2017年 夏糀対談 「宝来家旅館・カフェ茶蔵」染矢 雅子さん 「菓子司たけばやし」武林 清子さん

「宝来家旅館・カフェ茶蔵」染矢 雅子さん 「菓子司たけばやし」武林 清子さん 浅利妙峰(あさり・みょうほう)
武林 清子(たけばやし・きよこ)写真左
1953年佐伯市生まれ。24歳で結婚、「菓子司たけばやし」へ。2男の母。体調を壊したことをきっかけに、自然療法を取り入れるなど健康や食事には人一倍気を使っている。糀屋本店でも人気の甘酒饅頭やカボス饅頭・どら焼き・カステラのほか、羊羹・練りきりなどの祝い用菓子も販売。店頭には江戸時代に大日寺の住職が幕末に藩主から戴いたという籠が飾られている。
染矢 雅子(そめや・まさこ)写真右
1947年佐伯市生まれ。20歳で結婚、明治25年創業の「宝来家旅館」へ。3女の母。実家が農家で自然のものを食べるのが当たり前の環境で育ち、旅館でもバランスの良い料理を提供することから、食には自然と気をつかう日々。旅館の中庭にはすべてオーガニック素材で提供する「カフェ茶蔵」があり、遠方からも多くの人が訪れている
浅利妙峰(あさり・みょうほう)
「糀屋本店」女将
1952年、大分県佐伯市生まれ。元禄2年(1689年)に創業した『糀屋本店』の長女として生まれ、2女3男を育てた後、2007年から”こうじ屋ウーマン”を名乗り、糀文化の普及と伝承のために国内外を奔走。塩糀を現代に甦らせた糀ブームの火付け役。

こうじ屋ウーマン浅利妙峰が、糀を通じて素敵なご縁をいただいた方とおいしいお話で盛り上がる対談シリーズ。第6回は、糀屋本店と同じ京町通りの老舗の女将さん、「宝来家旅館・カフェ茶蔵」の染矢雅子さんと「菓子司たけばやし」の武林清子さん。まずは糀屋本店のお昼のまかないからスタート。気心の知れた3人だけに終始ハイテンション、地元愛あふれる話に花が咲きました。

浅利妙峰(以下、妙峰):今日は糀屋本店のお昼のまかないを、宝来家旅館の「カフェ茶蔵」をお借りして、ちょっとオシャレに食べていただいたけど、どうだった?

武林(清ちゃん):すごくおいしかった。うらやましい。だって、カラダにいいというのがよくわかる。

染矢(雅子さん):こんな風に3人でいただけて幸せ。サラダの味付けはどうしてるの?

妙峰:キュウリはキスケ塩50で水分を出しておいて、トマトとレタスを塩ペッパーでチャチャッと混ぜて。あ、オリーブオイルを入れるのを忘れた。

武林:やっぱり妙峰さんやね。でも、入れなくてもおいしいよ。

妙峰:あとはマヨネーズを少しと、粉チーズを振りかけてからめるとシーザーサラダ風になっておいしい。

武林:でも、まかないでこんなにお野菜があるといいよね。ナスのしぎ焼きもおいしかった。

妙峰:よかった。応用で塩糀で作っても最後にちょっと醤油を落とすと、それだけで味が膨らむ。やっぱり複雑な味の方がおいしい。

「常に塩糀やこうじ納豆は作っています。お煮付けも野菜炒めも塩糀を使って、あとはお醤油を落とすだけ。簡単だし、おいしい。」染矢

染矢:私も、野菜炒めは塩糀で作って、あとはお醤油を落とすだけ。簡単だし、おいしい。毎日でもOK。

妙峰:入れる野菜を変えればいいよね。ところで、私は家を継いだけど、2人はお嫁に来たんよね。

染矢:もう50年よ。妙峰さんは私より歳下だけど、いろいろ教えてくれるからお姉さんかな?

妙峰:よう言うわ(笑)。で、清ちゃんと私は同級生、幼稚園からの幼馴染み。

武林:同級生だけど、教えてもらうことが多いから、やっぱりお姉さんかな。すごく頼りになる。

妙峰:家が近くて仲がいいだけではなく、雅子さんも清ちゃんも食に関して造詣が深いので、支えたり支えられたり。3人で船頭町婦人会の役員をすることも多いので、私も雅子さんに「こんな文章書いたんやけど、どうかな」と持って行くし。

染矢:特に直すところはないんだけどね。一目置かれています、私(笑)。

妙峰:清ちゃんとは、あうんの呼吸みたいなところがあるよね。

武林:昔から一緒に遊んでいたから。

妙峰:3人の共通点は、何をするにしても正々堂々というか、正直で嘘がないこと。それに、商家の奥さんだから価値観の土台が一緒というのはあるよね。そして、3人ともかなり健康に気をつけていて食にうるさい。

染矢・武林:それはあるかも。

妙峰:私たちに名前を付ければ「京町ドライフラワーズ」やね。かつては生花だったけど、今はドライフラワー。

染矢:えー。みんな花が好きだから、「京町花好き」でもいいんじゃない。

武林:こういうのは妙峰さんが決めて。

妙峰:じゃあ、「京町フラワーズ」。

染矢:ドライはやめておきましょう。

妙峰:私たちは本当の姉妹みたいで、清ちゃんは弟さんから不揃いのあるトマトをもらったら、雅子さんと私に「おいしいから食べて」と持って来てくれるし、私もまかないでたくさん作りすぎたときには、2人に「食べて」と持って行く。

武林:ありがたいよね。夕食の料理が一品できて助かる。

染矢:自分でお料理を作ると似たようなものになるけど、妙峰さんがいろいろ発明してくれるからうれしい。

妙峰:雅子さんもいろいろ持ってきてくれる。「どうやって作ったの?」と聞くと、「妙峰さんが教えてくれたじゃない」ということがよくあるよ。雅子さんのポテトサラダ、絶品。いつの間にか雅子さんの十八番になってる。

染矢:ありがとう。皆が集まる時の定番になってる。自分で言うのもなんだけど、おいしい(笑)。でも、考えてみたら、塩糀がなかったときには今ほど交流はなかったよね。

武林:そう、妙峰さんが塩糀を始めてからやね。塩糀で作ったキュウリの漬物を持ってきてくれたのが最初だった。

妙峰:夏祭りのときに婦人会で売ったら、飛ぶように売れたよね。塩糀から揚げも。

染矢:以前は普通の塩を使っていたと思うけど、今は塩糀がないと何もできない感じ。常に塩糀やこうじ納豆は作っているし、お煮付けも塩糀で煮て、あとはお醤油を落として終わり。

武林:私もほとんどの料理に塩糀を使うよ。チャンポンに入れると旨みが出てまろやかになるし、お吸い物以外の汁物には必ず塩糀。ご飯を炊くときにも使う。

妙峰:清ちゃんのところは商売にも使うからね。

「うちの甘酒饅頭は、妙峰さんのレシピをもとにしたもの。小さな子どもが「ふわっとしておいしい~」って食べてくれるのが嬉しくてね。」武林

武林:そう、甘酒饅頭。小さな子どもが「ふわっとしておいしい~」って食べてくれるのが嬉しくてね。うちの甘酒饅頭は、妙峰さんのレシピをもとにしたもの。

妙峰:息子さんが私のレシピをブラッシュアップして進化した甘酒饅頭。お客様からは、ふわっと具合が違っておいしいとびっくりされる。

武林:普通の甘酒饅頭と材料はほとんど同じだけど、妙峰さんのレシピは粉が強力粉だった。

妙峰:普通、饅頭は薄力粉を使うけど、私は蒸せば饅頭、焼けばパンにしたかったから強力粉にした。膨らみ具合はどう?

武林:糀屋本店の糀は元気がいい。種を発酵させる発砲スチロールの箱を突き破ったくらい。でも、甘酒饅頭には謎がある。だって1つのセイロの中に1個だけシワシワのができることがあるんよ。

妙峰:あれは、不思議よね。饅頭は甘酒やイーストをいっぱい入れたから膨らむわけじゃない。うちのばあちゃんが「入れすぎても入れすぎんでもできん、ちょうどが難しい」と言っていた。

武林:そう、いつもその言葉を思い出すんよ。

染矢:次の日にオーブントースターで焼いて食べてもおいしいよね。

妙峰:糀屋本店でも「たけばやしの甘酒饅頭」のリピーターが多いです。

武林:人気があって嬉しい。冷凍できるのはありがたいし、冷凍することによって皮が柔らかくなる。

妙峰:雅子さんちの「茶蔵」の玄米定食も、遠くから食べに来てくださるよね。

染矢:おかげさまで、大分だけでなく宮崎などからも来ていただいてます。マクロビアンの方が口コミや雑誌を見て。娘の弘子が「茶蔵」を始めて丸8年経ちました。

武林:弘子ちゃん、こだわっているもんね。

染矢:うちの実家も野菜を作っているけど、野津町の「なずな農園」のものでないと使わない。感心するくらいこだわっている。ちょっと足りないときに、これは農薬を使っていないからと言っても絶対に使わない。

妙峰:糀も使っているよね。

染矢:もちろん。スコーンは私がほとんど焼きます。糀屋さんに来たついでにコーヒーを飲みに来たり、食事に来てくれたりする方がいらっしゃるので助かります。

武林:うちも。お菓子は受注生産だから、甘酒饅頭をしていなかったら今のように毎日お店を開けていなかった。ところで、私たち京町フラワーズのこれからは?

「私は佐伯が大好きだから、初めての人でも「ただいまー」と帰ってきてもらって「おかえりー」と迎えられるような発信源でありたいしそんな佐伯にしていきたい。」妙峰

妙峰:そうやね、佐伯は面白みがないと言う人がいるけど、私は佐伯が大好きで天国みたいな所だと思う。海のものも山のものもあって、空気もおいしい、人もいい。誰でも受け入れる心がある。だから私は、初めての人も「ただいまー」と帰ってきてもらいたいし、笑顔で「おかえりー」と迎えられるような発信源でありたい。今まさに京町通りがそんな町になりつつあるので、これをさらに進めて佐伯全体に広げていきたいと思うんやけど。

染矢:同感!うちでもお客さんと気軽にお話をして、仲良くなるから、朝は「いってらっしゃい」と送り出すと、「また来ます」と言って本当に来てくださる方が多いんですよ。

武林:海外のお客さんも、まるで家族や親族が帰ってきたような対応をしてあげるから嬉しいと思うよ。

妙峰:あとは婦人会として町づくりに協力して、それこそ幼児から小学生、中学生と子どもたちの縦のつながりをよくするための突破口を作るのが私たちの役目かな。

武林:それと、大人が年をとっても楽しめるところにしたいよね。

染矢:大賛成!

妙峰:「京町フラワーズ」の皆さん、これからも楽しく頑張りましょう!

染矢・武林:よろしくお願いします、お姉さん!

 

宝来家旅館・カフェ茶蔵(ほうらいや・ちゃくら)宝来家旅館・カフェ茶蔵(ほうらいや・ちゃくら)
◎営業時間 ・11:30~17:00 ※夜(18:00~21:00)はご予約のみ
◎ 定休日 毎週日・月曜日
◎ 所在地 大分県佐伯市船頭町14-28
0972-22-0120
http://www.houraiya-chakra.jp/
菓子司たけばやし菓子司たけばやし

 

◎営業時間 ・10:30~17:00
◎ 定休日 毎週日曜日・祝日
◎ 所在地 大分県佐伯市大手町3-4-9
0972-22-2230