大分合同新聞 灯にて掲載 10月22日(火)

2024年10月22日(火)大分合同新聞「灯」に『稲穂は天から降りてきた』と題した こうじ屋ウーマン 浅利妙峰のコラムが掲載されました。

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 稲刈りの季節がやって来た。見渡す限りの田んぼにたわわに実る稲穂は、まるで黄金のように輝いている。かつて13世紀にイタリアの探検家マルコ・ポーロが「東方見聞録」に日本を「黄金の国ジパング」と記し、黄金が豊富な国として紹介したのは、この豊かな大地が生み出す稲作の壮麗な風景ではないかと思ったりする。

 日本の稲作文化は、神話に深く根差している。古事記の「天孫降臨」には、瓊瓊杵尊が稲穂を抱えて天から降り、神武天皇が東征の際、稲を配り、民の生活を安定させたと書かれている。稲は私たち日本人にとって、単なる食物ではなく、命そのものを象徴する存在だ。その恩恵に対する感謝の気持ちは、神嘗祭(10月)や新嘗祭(11月)といった伝統行事を通じて伝えられ、神々と共に生きる信仰として今も息づいている。

 また、稲穂に自然発生する稲こうじは、こうじ菌の原型とされる。このこうじの神秘的な力は、日本の発酵食文化を支える重要な要素であり、古代から現代まで連綿と続いている。糀屋本店は、この神代から続くこうじの文化を守り、人々の食と健康を支え続ける使命を担ってきた。その歴史的な役割に誇りを持ち、これからもさらに精進を重ね、子々孫々にわたり、こうじの精神と技術を受け継ぎ、日本の歴史、文化、そして感性を輝かせ続ける一翼を担っていきたい。

(こうじ屋ウーマン・佐伯市)