2024年3月21日(木)大分合同新聞「灯」にて『こうじで造られ大蛇退治の酒』と題した こうじ屋ウーマン 浅利妙峰のコラムが掲載されました。
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ヤマタノオロチ退治の神話は、古事記と日本書記に記されている。高天原を追放されたスサノオノミコトは、出雲でヤマタノオロチに襲われている老夫婦と出会う。8人いた娘たちは毎年大蛇によって食べられ、最後の娘・奇稲田姫も危機にひんしていた。スサノオは姫を守るために奇策を提案する。姫をくしに変身させて、髪に挿し、強い酒を造らせて用意する。スサノオはその強い酒で、オロチを泥酔させ、眠り込んだところを成敗する。
この時、オロチを酔わせるために用いたのが「八塩折の酒」である。その酒の製法は、米こうじとかゆを仕込み、熟成したもろみを布でこし、かすを取り除いた液に再び米こうじとかゆを仕込む。この操作を幾度か繰り返し、アルコール度数の高い酒を造る。八塩折の八は、8回絞りを繰り返すという意味ではなく、8という数字で回数の多いことを表し、神話特有の誇張表現が取られている。何度も繰り返して酒を醸造し、絞ることを重ねていけば、大蛇を酔いつぶさせるほど、アルコール度数の高い酒ができることを、古代人は知っていたのだ。
この酒は、カビの酒、すなわちこうじを用いて造った酒である。2千年以上前からこうじは使われて、今もなお私たちの生活に潤いと食の喜びを与え続けてくれる日本の宝を誇りたい。そして、こうじをなりわいとできることに感謝しつつ、これからも精進努力を重ねたい。
(こうじ屋ウーマン・佐伯市)