2024年8月17日(土)大分合同新聞「灯」にて『八岐大蛇退治の酒』と題した こうじ屋ウーマン 浅利妙峰のコラムが掲載されました。
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神話にある素戔嗚尊が八岐大蛇退治に使った酒は、八塩折の酒。かゆの中にこうじと水を入れて、醸し、絞ってできた酒の中に再びかゆとこうじを入れて醸すことを3度、4度繰り返すと、強い酒ができる。この酒を飲んで泥酔した大蛇を切り倒し、退治した際、しっぽに何かカチリと音がして、出てきた刀が草薙の剣だ。
佐伯地方には大和流、三輪流の流れをくむ佐伯神楽が伝わっていて、多くある演目の一つ「綱切神楽」はこの大蛇退治の話だ。神殿の天井四隅に大蛇に見立てた8本の白いサラシを張り巡らせ、舞ながら真剣を使い切っていく。
私の住む船頭町、住吉神社の春夏の祭りでは、この神楽が奉納される。幼い頃から見聞きしてきた神楽の笛や太鼓の音とともに舞うリズムは、私たちの血や肉にまで届いて、元気を奮い立たせてくれる。
神楽の舞い手の一人、村上昭好さんの舞は力強く魂を揺さぶる。ご自分の神楽面を所有され、その面の肌は白に近い灰色に金が施され、髪は黒、従来の物より殺気が漂う。村上さんの舞は手足の上げ下げから首の動き、遠くを眺める目、にらみ付ける迫力は天下一品。まるで蛇ににらまれたカエルのように心臓がバクバクして、背筋にはビリビリと電流が走る。「神楽面を着け、舞い、面を外すまで、自分の意識は飛ばして、神の舞い降りる器となれ」と教えられたと聞く。舞い手と観衆は一つとなり、神が舞い降りる天孫降臨の場がそこに開かれる。
(こうじ屋ウーマン・佐伯市)