2024年9月20日(金)大分合同新聞「灯」に『倒壊した樹齢三千年の杉』と題した こうじ屋ウーマン 浅利妙峰のコラムが掲載されました。
―――――――――― ―――――――――
空気が澄み渡り、空が高く感じる季節になってきた。夜に仰ぐ星の光は過去の輝き、宇宙や自然界の時間は悠々と流れている。私たちの命はきらめく一瞬の光とも例えられ、喜びや悲しみ、喜怒哀楽が次々にやって来ては去る。80年、90年の寿命は、長くもあり短くもあるが、それに比べ樹木の樹齢は長い。
樹齢千年を超える天然杉が多く存在している鹿児島県・屋久島は、九州の南に位置する日本最大級の離島の一つで、約1400万年前に地殻変動により形成された。険しい山岳地形と豊富な自然資源の独自な生態系は「東洋のガラパゴス」と呼ばれることもある。亜熱帯性気候と多雨の影響で豊かに育まれた森林景観と生態系は貴重で、世界自然遺産にも登録され、重要な観光資源の一つとなっている。
8月末に日本列島を襲った台風10号は、勢力が強く各地に大きな被害をもたらした。この台風の強風で、屋久島の推定樹齢3千年の「弥生杉」と呼ばれ、親しまれている高さ約26㍍、幹回り約8㍍の巨木が、根元近くから約1.5㍍を残して倒れた。3千年の長きにわたって、屋久島の自然を見守り続けていたご神木の倒壊、この異常事態をどう受け止めればよいのか。大きく価値観が変わる未来を恐れることなく、人知を超えた大きな力への畏怖や感謝を、常に抱いて生きる大切さを改めて心に刻みたい。
(こうじ屋ウーマン・佐伯市)