大分合同新聞 灯にて掲載 4月27日(土)

4月27日(土)の大分合同新聞夕刊「灯」にて
「パリの貴婦人はよみがえる」と題した
こうじ屋ウーマン 浅利妙峰のコラムが掲載されました。

―――――――――― ――――――――――

「パリの貴婦人はよみがえる」

ノートルダム寺院(大聖堂)の炎上にフランス国民は悲嘆に暮れ涙を流し、なすすべもない中で、ひたすらに賛美歌のアベマリアを歌い続けた。いつもの風景が突然、無残な姿に変わる。長い時間をかけて築き上げたものが、目の前で焼き焦がれ、崩れ落ちる姿を見せつけられる。両手を組み、ひたすら祈りを届けることしか残されていない。

フランスが一つになった。いや世界中の人が、ノートルダム寺院の炎上する姿に向けて手を合わせ、涙を流し、祈りをささげた。なすすべはないけれど、ひたすらに感謝し、祈るだけで心の中に安心が生まれることを思い出させてくれた。それはキリストがはりつけにされた十字架を眺めながら、祈ることしか残されていなかったあの状況と同じ。燃えさかる炎の中に自分のことは顧みず、命をささげたキリストの姿が見えた気がしたのは、私だけではないだろう。

世界中から多くの祈りが届けられた。重要なのは、誰に向かって祈りをささげたかではなく、対象とする神仏は違っても、大きな力へ畏敬の念を向けて、良き道を開かせたまえと祈る心だ。今という時代を共に生きる、私たちの祈りの心が天に届かないはずはない。小さな人間の心の中にひたすら祈る喜びを思い出させ、他者のために祈り、人類愛にと広げる熱き心が芽生えた。パリの貴婦人はきっとよみがえる。 (こうじ屋ウーマン・佐伯市)