読売新聞「道あり」に糀屋本店 浅利妙峰が紹介されました④

2025年6月3日(火)から『読売新聞』の連載「道あり」8回シリーズに、こうじ屋ウーマン浅利妙峰が取り上げられています。こちらは6/10掲載の4回目の記事です。「塩糀」誕生のときのお話✨ぜひご覧ください。

読売新聞オンラインにも掲載されています。
▶6/10掲載 ④「塩麹漬の漬物床を調味料に」家業の危機を打開しようと開発…「ほんのひと手間で料理上手」一大ブームに

江戸に着想「調味料」ヒット

 2007年、母の死をきっかけに「糀屋本店」の経営に本格的に関わり始めたが、店の赤字は続いていた。家業の危機を打開しようと取り組んだのが、新商品の開発だった。

 「こうじが広く家庭で使われていた時代にヒントがあるのではないか」。そう思い立ち、書店から取り寄せたのが、江戸時代の食物事典「本朝食鑑」(1697年)。読み進めると、「塩麴漬」の記述が目に留まった。

 調べてみると、魚や野菜の漬物だった。幼い頃からこうじを使った食品に親しんできたが、聞いたことがない。しょうゆやみそと違い、現代に伝わらなかったものを、どうすれば世の中に広められるか——。そう考えているうちに、ひらめいた。「塩麴漬の漬物床を、調味料として使ってみてはどうか」

 この漬物床の作り方は、米こうじ3、塩1の割合で混ぜ、水をひたひたになるまで入れる。

そして、こうじが吸わなくなるまで水を加え続け、1週間程置けば完成だ。試作してイカにまぶすと、たちまち3日間漬け込んだようなうま味のある塩辛ができた。ただ、味が均一化していないと商品として成立しない。試行錯誤しながら黄金比を探し求めた。数か月たち、見つけたのは、米こうじと塩に対し、水4の割合だった。 

 こうして仕上げた「塩こうじ」でキュウリやナスを味付けしては、家族や近所の友人に食べてもらって感想を聞いた。当時試食した友人の一人、染矢雅子さん(78)は「次は何を持ってきてくれるのかと楽しみになるくらい、どれもおいしかった」と話す。

 塩こうじは、手間をかけずに手作りできる。食材のうま味を引き出し、他の調味料を加えなくても簡単に料理がおいしくなる。さらに、食品添加物を使わないため、子どもにも安心感をもって食べさせられる。

 「ほんのひと手間かけるだけで料理上手になれ、子どもたちの『おいしい』の声が聞ける。忙しいお母さんたちにも受け入れられるはず」。3男2女を育てた母の直感は的中し、「万能調味料」として一大ブームを巻き起こすことになる。