2025年6月3日(火)から『読売新聞』の連載「道あり」8回シリーズに、浅利妙峰が取り上げられています。こちらは6/11掲載の5回目の記事です。こうじ屋ウーマンの誕生&「塩糀」大ブレイクのときのお話✨ぜひご覧ください。
🔗読売新聞オンラインにも掲載されています。
▶6/11掲載 ⑤「塩こうじ」商標登録をしなかったことで大手参入、流行語大賞ノミネート…百貨店やレシピ本にテレビ番組も
百貨店やメディアも注目
こうじ屋ウーマン——。実家のこうじ店「糀屋本店」(大分県佐伯市)を引き継ぐ前年の2006年頃から、個人ブログでこう名乗っていた。こうじが原料のしょうゆや甘酒を使ったレシピを紹介し、料理好きの間では話題になっていた。
08年2月、自身の店以外で塩こうじを売り出す”デビュー戦”に恵まれた。舞台は、東京の百貨店「伊勢丹新宿店」。1週間の期間限定で売り場を構えた。
「こんな田舎の商品。お客さんに受け入れてもらえるかな」。ブログを通じて、ある程度知られていることは分かっていた。それでも不安だった。販売初日それ杞憂に終わった。
「どうやって使うの」。興味を持った来店客が売り場の前で立ち止まると、あれよあれよと人だかりができた。売り場はにぎわい、期間中の売り上げは、予想を上回った。期間を終えても商品は店頭に並び、翌3月には追加注文も相次いだ。
岩田屋本店(福岡市)で10年にあったイベントに出品した際も長蛇の列ができた。商品が足りずに、佐伯市の本店では、近所の友人たちがボランティアで瓶詰め作業を手伝ってくれ、夫の真願さんが福岡市内まで車で運んだ。
大手出版社の目に留まり、11年以降、複数のレシピ本を出版。「ひとさじで料亭の味!魔法の糀レシピ」(2011年、講談社)の担当編集者だった古川ゆかさんは「塩こうじの登場で、家庭で手軽においしい料理ができるようになった。働くお母さんたちの味方になると希望を感じた」と振り返る。
塩こうじはテレビ番組で取り上げられる機会が増え、自身もNHKの「きょうの料理」に出演した。塩こうじを使ったオムレツなどのレシピを紹介すると、放送中から店では購入を求める電話が鳴りやまなかった。客も全国から殺到したため、原料の米こうじが品薄になり、売り場に「米糀お一人につき1㌔まで」との紙を貼ったこともあった。
「家庭の台所にこうじの活躍の場を取り戻したかった」という通り、商標登録をしなかったことで大手メーカーが市場に参入。塩こうじは、一大ブームを巻き起こし、12年の新語・流行語大賞にノミネートされた。
食材にまぶしたり、下ごしらえに使ったり。使い勝手は塩に近い。「塩代わりに使う調味料として売り込めば、海外でも受け入れられる」。同年6月、米ニューヨークに飛んだ。