大分合同新聞 灯にて掲載 4月9日(水)

2025年4月9日(水)、大分合同新聞「灯」に『千邪不如一直』(せんじゃいっちょくにしかず)と題した こうじ屋ウーマン 浅利妙峰のコラムが掲載されました。

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 「千の邪道は、ただ一つの正しき道に及ばない」とするこの言葉が好きだ。子育て真っ最中に読んだ本の中に見つけ、心に染みた。胸の奥深くにあって、静かに私を見守ってくれている気がする。

 現代は、表面的な巧みさや効率、目先の利益が重視される時代となった。だが邪は、千、万と数を重ねても邪でしかなく、やがて崩れ去る。一方、一直の道は時をかけて、人の心に染み、信頼となって後に続いていく。日本人のご先祖さまたちはこの真理を理解し、どの時代にあってもひきょうを嫌い、「先義後利」の精神で正々堂々と生きてこられた。

 渋沢栄一もまた、一直の人である。

農民ながら、藍玉の商売を通して実務を身に付け、剣術や論語も学ぶ。幕臣となり、パリ万国博覧会の使節団として渡欧。明治新政府に仕官するも、派閥や官僚が理を曇らせ、情や派閥で動いていく現実に失望し、わずか2年で辞職。以後、民間の力で国を豊かにする「上からの統治ではなく、民の底力によってこそ国は立ち上がる」という信念の下、500以上の企業、団体の設立や運営に関わり、「道徳経済合一説」を唱えた。利潤だけではなく、社会全体の幸福を目指し、教育、福祉、産業、金融を結び付けて民間の力で国を立て直す志を貫いた。

 今こそ、千邪に惑わされず一直の徳を積み、子々孫々に真の精神をつなげていく責務が、私たち大人に課されていく気がしてならない。

(こうじ屋ウーマン・佐伯市)