8月19日（日） 「旨みを醸し出す 麹のふしぎな料理力」出版記念トークイベント ※終了しました

お盆が過ぎ、夏休みも後半にさしかかった東京・銀座にて、糀文化を伝承する“こうじ屋ウーマン”こと浅利妙峰と、科学的見地から糀の味覚をひも解く東京農業大学の前橋健二准教授が、それぞれの視点から糀に秘められた「酵素」や「旨み」の素晴らしさ（からくり）について語り合うトークライブを開催しました。

会場は、大分県の旬の食材をふんだんに用いて上質な料理を提供する「坐来大分」。

梅原陣之輔総料理長による“大分産食材と糀の出会い”は実に創作性に富んでおり、次々と運ばれてくる料理はそれぞれの素材の味が糀によって存分に引き出され、舌の上で幾重にも広がる味わいを生み出す逸品ばかり。

参加者の皆さんが口々にその美味しさをほめたたえ、喜んでいる姿が印象に残りました。

 

＜坐来大分・糀をつかった創作料理のお品書き＞

◆アミューズ
無花果(いちじく)糀　しらす糀胡瓜　椎茸糀焼

◆先付
冠地鶏の檸檬(れもん)糀蒸し　日田幸水梨(こうすいなし)添え　無農薬檸檬

◆佐伯鉢
佐伯ぶりの塩叩き　こうじ納豆と香味野菜

◆温鉢
豊後牛の塩糀蒸し　国東(くにさき)椎茸　中津白葱　だし糀

◆〆の逸品
ばら寿司　穴子　鰹節　きのこ

◆甘味
焼き糀饅頭　水菓子糀和え　甘酒抹茶氷　甘酒コンフィチュール

まずは、浅利妙峰による10分強のプレゼンテーションからスタート。
320年以上続く糀屋の女将の観点から、糀の歴史と共に守り受け継がれて来た食文化や、米糀のつくり方、糀の活かし方などのお話をしました。この日は盛りだくさんな内容でしたので、いつもは40分ほど話す内容をギュギュッと凝縮させてお話しし、その分、前橋先生との対話をお愉しみいただけるようにしました。

次に、バトンタッチをして前橋先生によるプレゼンテーション。
麹カビの成り立ちから、麹カビがつくる酵素の働きと分解の仕組みまでのお話に加え、日本の調味料研究の第一人者でいらっしゃる前橋先生ならではの味覚についてのお話も伺うことができました。

なかでもとても興味深かったのは「でんぷんやたんぱく質のような高分子は、そのままでは胃腸内に栄養として吸収されないだけでなく、口内で味覚として刺激されない（＝味として味蕾（みらい）に感知されない）」ということでした。つまり、「美味しいと感じるということは栄養になる状態である」という証だということでした。

プレゼンテーションの後は、専門が異なるふたりのコラボレーションが興味深い本著から、抑えておきたいポイントをいくつか質疑応答形式でご紹介し、掲載されている43品のレシピ開発秘話なども聴き、お客さまからの質問にもお応えしました。

また、いつも糀屋本店の糀商品の魅力を存分に引き出してくださる梅原総料理長にも、料理人ならではの観点や知識からトークライブに途中参戦していただきました。
今回のコース料理でつかった穴子の身が実に柔らかくなり、臭みが消えたことには本当に感動されたご様子で「海が近い糀屋さんがつくるお味噌には糀が多く含まれると昔から伝え聞いていましたが、今回それを体感することができました。
糀屋本店さんの糀も魚と相性がいい所以(ゆえん)ですね」と、梅原総料理長。

3人の意見がそれぞれに響き合う内容に、聴いてくださったお客さまにも豊かなお料理と共に、存分にご堪能いただけたようで、この日この場所でしか生まれない贅沢な2時間となりました。