日中、家の中が熱くなる暑い時期の塩糀作りで多くのご質問が寄せられています。
夏場は気温が高く雑菌の活動も旺盛になります。このことを念頭に置いていただき、以下の5つのポイントをおさえると失敗しにくいかと思われます。
① まず仕込前に手指を始め、仕込に使う器具、保存容器、使用するテーブル等の殺菌を念入りに行ってください。
「物が腐る」という現象は腐敗をもたらす原因の雑菌が繁殖することで発生します。
一般家庭で最も取り組みやすい煮沸消毒(器具、容器のみ)は80℃のお湯で10分以上の煮沸し、トングなどを使って取り出し、清潔な乾いた布巾の上に伏せて乾かします。
煮沸消毒が出来ない大きな容器やテーブルなどの場合はアルコール(消毒用70%エタノール)で拭くことがお勧めです。アルコール(消毒用70%エタノール)は薬局でお求めいただくことができます。手に入らない場合はホワイトリカーで拭くのも良いとされますが、アルコール(消毒用70%エタノール)の方がしっかり殺菌できます。アルコール(消毒用70%エタノール)で拭いた後は乾いて殺菌完了となります。
手指は石鹸でしっかり洗浄したのち、アルコールで拭いて殺菌しましょう。
仕込時に混入する雑菌が少なければ少ないほど、腐るリスクは減ります。必ず念入りな殺菌を行って、衛生的な仕込環境を作ってから望みましょう。
② 熟成は常温で結構です。ただし、気温が高い場合は熟成が早くなります。
通常7日~10日程度の熟成期間を置きますが、気温の高い夏場は5日程度で十分かと思われます
甘味が出てきたら速やかに冷凍庫で保管してください。
③ 保存容器の口はしっかり閉じる。
塩糀の熟成で最も大事なことは酵素の抽出です。麹菌の生育は私達職人が行っており、この生育期間に出来るだけたくさんの分解酵素を糀に作ってもらいます。この糀を塩水中に入れることで酵素が抽出され、タンパク質素材に塗ると旨味が出るというのが塩糀で料理をすると美味しくなるという仕組みです。同時に米の中のデンプンが酵素によって分解される期間でもあります。甘味がでてきたらできあがりというのもこの糖化を待っているということです。この酵素の抽出と糖化を待つ熟成期間において、酸素の供給は特に重要なことではありません。口を開けないと糀が息が出来ないとの説もございますが、すでに食塩水の中にある糀に酸素が供給されることはありません。麹菌は食塩で揉まれた時点で麹菌の努め(分解酵素を生産するという役目)を終え、ここから先は麹菌が作った酵素を利用するようになります。そのため、熟成中に容器の口を必要以上に開けたままにしないことをお勧めします。また、保存容器の蓋はしっかり閉じてください。
④ 混ぜる
攪拌の目的は、常に同じ面が空気に触れて、カビが生えてしまうのを防ぐためです。
カビは空気のない水中に生えることはできませんので、なるべく表面を動かしてカビが生えにくくすることが目的です。毎日1度混ぜる際は、清潔にした貝杓子などをご使用いただくか、保存容器の口を閉じたまま振っていただいて攪拌していただくことをお勧めします。
容器の口を長時間開けたままにしますと、雑菌などが繁殖しやすくなりますのでご注意ください。
⑤ 完成後の保管は冷凍庫で。
完成した塩糀は冷凍庫でも保管が出来ます。塩分濃度が12.5%程度もありますので、氷結することもありません。何時間冷凍しても凍る事なく、取り出してすぐにお使いいただけます。
品質に問題はありません。
⑥ 塩の分量を減らさない。水の量を増やさない。
これはすべての季節で共通することですが、塩分量が低いと物は腐りやすくなります。逆に高いと長持ちします。食品の加工では塩を利用することで微生物が生きにくい状況を作ると同時に、浸透圧で水分を抜き加工品の品質を長持ちさせます。
これは刺身などの生の魚が日持ちが短いのに対して、塩分を加え、水分を飛ばした干物が長持ちすることをイメージしていただくと分かりやすいかと思います。 塩糀作りにおいても同様に「塩分を控えよう」と塩の量を減らしたり、水を増やしたりすることが失敗の原因になります。必ず塩分は最低でも12.5%以上で仕込んでください。
●塩分の計算 使用する塩の分量g÷(糀の分量g+塩の分量g+水の分量g)×100=塩分濃度%