10月3日(水)の大分合同新聞「灯」にて
掲載されました。
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日本を表す言葉に「瑞穂の国」という表現がある。たわわに実る黄金色の稲穂を見ると心がワクワクするのは私だけだろうか。きっと私の血の中におられるご先祖様が、長い間工夫し苦労して育て上げた稲へのいとおしさと収穫の喜びを、共に感じているのだろう。
お米を使ってこうじを作り、商いをしているわが家では、「お米を大切にすること。一粒たりとも無駄にしてはいけない」としつけられ「もったいない」「ありがたい」の言葉も生活の中に溶け込んでいた。「お米一粒に八十八の手がかかっているからお米を粗末にすると目がつぶれるよ」「お茶わんに残る一粒まで大事に食べなさい」ー私と同世代の方は、ご両親からそう言われて育ったに違いない。
消費が美徳の時代はとっくの昔に過ぎ去っているが、無駄使いは止まらない。電化製品によって生活は豊かになり自由な時間は増えたけれど、心の満足度は比例してついてこない。本当の豊かさは人のために事をなし、心がほっこりと熱くなる瞬間に存在する。頭を使い、心を配り、体を動かして汗をかき、その中で生まれる充実感こそ、幸せの醍醐味。自分のためでなく、誰かのために身体を動かすことを捜し、優しさを差し出してくれる方に「ありがとう」と感謝できる心の余裕を見つけたい。
(こうじ屋ウーマン・佐伯市)