時代が変わり、人が変わっても、
いつも熱い思いがあり、進化する伝統と技術がある。
先人の英知と技、そして微生物の力を借りながら333年もの間、連綿と受け継がれてきた糀屋本店のまさに“原点”であり、“いのち”である「糀」にスポットを当てます。
すべては、ここから、糀から
江戸時代には毛利二万石の城下町として栄えた大分県佐伯市。「糀屋本店」はこの地で元禄2年(1689)より、こうじ専門店として江戸・明治・大正・昭和・平成・令和の時代をつなぎ、糀づくりを続けてきました。創業者は、初代・吉左衛門信義、2012年に父・浅利幸一の跡を継いだこうじ屋ウーマン・浅利妙峰が9代目となります。今日まで糀が存在し続けているのは、日本人の食文化の根っこの部分をずっと支えてきたから。そして、糀たちを支えてくださるお客様がいらっしゃるからです。
受け継がれる伝統の技と心に刻む先人へのリスペクト
今は使われていませんが、先人たちが声を掛け合いながら、あうんの呼吸で糀を作り続けてきた麹室がそのまま残っています。こうじ屋ウーマンは、ここに来ると自然と涙があふれると言います。姿は見えなくても、足の裏や手のひらに感じる優しさが、祖先からの魂のギフトのように思えていつも励まされるそうです。そして、その意志を受け継いだ愛情たっぷりの糀を実直に作り続けることを改めて誓うのです。
8代目父・浅利幸一とこうじ屋ウーマン浅利妙峰
糀があれば、味噌も醤油も塩糀も甘酒も作れます
「塩糀は知ってるけど、糀って何?」という方、糀は、蒸したお米に麹菌という微生物を繁殖させたもの、表面の白いふわふわしたものは麹菌の胞子です。1000年も前に酒造業が始まって以来、味噌・醤油・甘酒など日本が誇る発酵食品を作るのに欠かせないのが糀です。「こうじ」を表す文字には「麹」と「糀」の2種類があって、こうじ全般を「麹」、米でつくったものを「糀」と表します。ちなみに麹菌は、2006年に「国菌」に認定されました。
伝統の技+最新の科学。おいしい糀は甘酒を作るとわかります
甘酒や味噌の味は、糀の出来次第で決まります。それだけに一切妥協せず、糀の持つ力を極限まで引き出したいという信念で取り組んでいます。大分県産米を100%使用、江戸時代から繋いできた室蓋(むろぶた)と呼ばれる道具を使った製法を守りながら、衛生面では最先端の技術を導入、常に徹底した温度・湿度管理のもと丹精込めて作っています。そして、もっと糀を活かしたいと、塩糀やキスケ糀パワーなど未来を見据えた製品を提案し続けています。
使い継がれなお出番を待つ室蓋
解明されてきた糀の嬉しい健康効果、ポイントは酵素です
便通改善、中性脂肪低下、美肌など、糀の嬉しい効果が次々と明らかになっています。また、糀の調味料を使うと固い肉も柔らかくなり、旨みや甘みも増してぐんとおいしくなります。つまり、糀にはそれだけのパワーが秘められています。このような変化をもたらしてくれるのが、生命を維持していくのに欠かせない酵素です。私たちが食べたものは、胃や膵臓などの消化器から分泌される消化酵素によって、栄養分をばらばらに分解して体内に吸収されます。消化酵素を含む食品の中でも、糀は炭水化物・タンパク質・脂肪を分解する3大消化酵素をすべて持っています。このため、糀を使って料理をすると、消化酵素が体内に取り込む前に事前消化してくれるので、年齢とともに減少していく体内酵素を無駄づかいせずに済むというわけです。
糀は無限の可能性が眠っている「未完の大器」!?
塩糀ブームから甘酒ブーム、そして今、糀を使って様々な発酵食品を手づくりする人が増えています。たとえば、糀にトマトやあずきなどを合わせて発酵させることによって、今までになかったユニークな食品や調味料などもたくさん生まれています。糀や発酵についてもっと知りたいという人たちも世界中に広がっています。もしかしたら、糀には無限の可能性が眠っていて、私たちはまだそのほんの一部しか知らないのかもしれません。
糀を使った豊かな暮らしを提案したい
食の洋風化が進み、日本の発酵調味料の消費が減少する中、塩糀ブームは、若者や世界のシェフに糀や和食への関心をもたせるきっかけとなりました。創業333年の節目を迎えた今、糀の未来をより輝かせるお手伝いをし、笑顔の食卓と身体に優しい糀料理で『世界中の人をお腹の中から元気に幸せにしたい』とますます強く願っています。